最新更新日:2024/04/23
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校訓「やさしく つよく ただしく」  学校教育目標「創造・挑戦・前進する段原っ子の育成」  

臨時休校の対応について

 すでに報道等で御存知のように,新型コロナウイルス感染拡大に伴い,広島市の小中高校・特別支援学校等においては,3月2日(月)午後から3月25日(水)まで臨時休校となりました。予定されていた児童の学習内容の習得,学年のまとめ,成績処理,卒業式の実施,修了式の実施等については,次のとおり実施していきます。現段階では,どのような課題がでてくるのか不透明なところもありますが,家庭,地域,学校が力を合わせてこの難局を乗り越えたいと思います。
今後の刻々と変化する状況への対応については,児童を中心に据え,事柄の意味や意義に照らし合わせながら,行ってまいりますので,御家庭におかれましても御理解と御協力をお願いいたします。

1 家庭・地域と学校の連絡は,メールまたは電話によって行う。予定が変更となった場合も,メールまたは電話で配信する。連絡の学校の窓口は,原則教頭とする。
2 児童の健康管理について,発熱等の風邪の症状や感染症など,児童が疾病に罹患した場合は,速やかに学校へ連絡する。
3 休校中の過ごし方について,本日配布の「臨時休校中のくらし」を参考にする。特に,感染拡大を防ぐための基本的な対策を徹底する。
4 各学年の成績処理は,2月までの結果をもとにして行う。成績表「あゆみ」は,3月24日(火)保護者に御来校いただき,担任から渡す予定とするが,そのときの感染状況によって変更する場合もある。
5 卒業式については,広島市教育委員会の基本方針に沿って行う。参加者を卒業生及び保護者のみとする,式典の内容を精選し,時間短縮を図るなどの措置をとる。
6 児童の修了式,教職員の離任式は,中止とする。
7 家庭学習については,各学年・学級で計画的な進め方ができるように,テスト・プリント等を配布し指導する。家庭の一員として家事の手伝い等に取り組むようにする。
8 自宅等で一人で過ごすことのできない低学年(1〜3年生)及び特別支援学級児童の学校での特例的な受け入れについては,本日配布した別紙のとおりとする。不明な点は,学校までお問い合わせる。放課後児童クラブは,午後1時からの開所となる。
9 休校中の児童の生活について,特に次の点に留意する。
 ⑴ 手洗い・うがい,咳エチケットなどの基本的な感染症対策を徹底する。
 ⑵ 十分な睡眠,適度な運動や栄養のバランスのとれた食事など,免疫力を高めるよう配慮する。
 ⑶ 健康観察を徹底して行い,発熱等の風邪症状が見られるときは,無理をせず療養する。
 ⑷ 適切な環境保持のため,こまめな換気を心がけるとともに,空調や衣服による温度調節を含めた温度・湿度を管理する。
 ⑸ 外出を控え自宅で過ごさせるようにし,不特定多数の人が集まる場所へは,できるだけ行かない。

働き方改革の推進と教育活動の質的向上

 「学校だよりだんばら通信NO.5(8月号)」でもお知らせしたように,「広島市教育大鋼(H28)」「広島市教育振興基本計画(H30)」に基づき,学校においてこれまで教職員が担ってきた役割の見直しと業務の効率化を図り,限られた時間の中で児童と向き合う時間を十分に確保するために,「広島市の学校における働き方改革推進プラン(H30)」が策定されました。
 学校が抱える課題が複雑化,多様化し,学校に求められる役割が拡大する中,教職員の勤務が長時間化している実態を踏まえ,教職員が健康でやりがいを持ちながら,児童と接する時間や授業改善のための時間を確保する環境を整えることが急務となっています。ここでは,教職員の負担軽減と教育活動の質の維持,向上をいかに結び付けていくかが大切になります。なぜならば,教職員の負担軽減が実現しても,この改革が児童の学力向上や教職員のやりがいにつながらなければ,学校は枯渇してしまうと考えるからです。
 そこで,本校においては,この働き方改革を学校教育の充実,発展のためのまたと得がたいチャンスと捉え,教職員の長時間勤務の改善が,学校教育の質の維持,向上につながるように,次のような教育活動,学校行事の改善,見直しと,新たな教育活動への挑戦,創造を実行していきます。
保護者,地域の皆様におかれましては,今後とも御理解と御協力のほどお願いいたします。

1 これまでの教育内容 活動の改善 見直し
(1) 年間授業時数
○ 文部科学省で定める標準授業時数を基本とし,削減を図る
(2) 家庭訪問
○ 全児童対象→希望者のみとする
○ 担任が全児童の居住地を確認する
(3) 運動会
○ 内容を精選し時間を短縮する
(4) 夏季休業中の水泳指導
○ 苦手な児童の指導,水泳記録会への指導は行わない→授業での保証に努める
(5) 個人懇談会 教育相談
○ 個人懇談会は年間2回実施する(夏季,冬季休業)
○ 7月,12月実施→随時,希望により実施する
(6) 前期前半終了日(夏休業開始前日)
○ 7月22日→7月20日とする
(7) 離任式 退任式
○ 朝会や修了式にて簡略化して行う
(8) 登校指導 下校指導
○ 教職員による学校外での指導は原則行わない
(9) PTC活動
○ PTA(学年委員)による企画運営→学年担任による企画運営とする

2 新たな教育内容 活動の創設
(1) 学力向上,楽しい学校生活に関する検査の導入
○ CRTテスト(絶対評価法による学力検査)を実施する→すでに本年度1月実施済み
○ Q-Uテスト(学校生活意欲と学校満足度のアンケート)を実施する
○ 英語検定,漢字検定等を実施する(任意)
(2) 月一回教職員研修日の設定(午後)→すでに試行
○ 授業力,指導力向上に向けて教員研修を充実する
○ 学力補充の時間として児童の個別指導を行う
○ 児童の悩みを聴いたり,相談に応じたりする
(3) 児童が心待ちにするような行事の創設・充実
○ 児童が楽しみにしている行事は原則削減しない
○ 学校,学年,学級における特別活動について,児童の発想を一層生かしゆとりをもって行う
(4) 「総合的な学習の時間」の自主編成の推進
○ 地域の歴史,文化,平和に関する教材を開発する
○ 児童による「自治」,地域への「奉仕と郷土愛」,豊かな「感性」を育む教育内容を充実する
(5) 始業時刻の変更 短時間学習の導入
○ 始業を8:30→8:25とする
○ 朝15分×週3時間(45分)の授業設定により新学習指導要領の授業時数増に対応する
(6) 留守番電話による対応
○ 18:00〜翌朝7:50とする→すでに実施

「Society 5.0」を主体的に生き抜く教育活動の推進

 令和2年(2020年)がスタートしました。メディアでは,東京オリンピック・パラリンピックの開催についての話題が大きく取り上げられますが,本年は小学校において,新学習指導要領が実施される重要な年でもあります。段原小学校は,挑戦する学校・創造する学校を基本として,新しい学び文化の確立を目指します。そして,心身ともにたくましく,思いやりをもち,主体的に学習する子供の育成を通して,段原小学校で学んでよかったと実感していただけるような教育活動を展開していきます。
 学校でどのような子供を育てるのかという目標は,この子供たちが将来どのような社会を生きていくのかとの社会的要請に規定されます。現代社会は,先行き不透明で未来予測が困難な時代と言われています。このような状況の中で,5年後の社会を予測することさえ容易ではありませんが,近年「Society(ソサエティ) 5.0」という未来社会の姿が,教育現場にも徐々に浸透してきています。
 内閣府によると,「Society 5.0」とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会(Society)」と定義されています。狩猟社会(Society 1.0),農耕社会(Society 2.0),工業社会(Society 3.0),情報社会(Society 4.0)に続く,「超スマート社会」を意味するもので,第5期科学技術基本計画(2016)において,わが国が目指すべき未来社会の姿として提唱されています。そこでは,IoT(Internet of Things),つまり,自動車や家電など,あらゆる人とモノとがインターネットを通じてつながり,自動認識,自動制御,遠隔操作できるようになることによって,様々な知識や情報が共有され,今までにない新たな価値を生み出すことになります。また,人工知能(AI)により,必要な情報が必要な時に提供されるようになり,ロボットや自動走行車,ドローンなどで,少子高齢化,地方の過疎化などのあらゆる格差を克服していくことが標榜されています。
 このような社会の動向に伴い,令和2年施行の新学習指導要領においては,これからの社会で求められる学力の要素が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の枠組みで示されています。そこでは,何を知っているか・何ができるかだけでなく,それをどのように使うか,自らが問いを発して答えを創りだしていく資質・能力としての「主体性」や「創造力」が強く求められているといえます。
 この「主体性」をどのように育てるかについては,自明なものではありませんが,最近の論調からいくつかの要件に収斂することができます。第1は,意味や意義を問うことです。日常の事柄に対して,「なぜか」という本質的な問いをもつことです。自問自答することによって,「何を目指し,どのようにすべきか」を自覚するようになります。第2は,自分で決めることです。自分の性格,能力,適性などを踏まえて,自分で選択・決定していくのです。まわりに同調するばかりでなく,自分らしさを発揮する経験も必要になります。第3は,見守り支えることです。子供が自分でできるように,大人が適切な指導性を発揮することです。細かく言ってやらせる過干渉や,子供任せの自由放任に偏ることなく,大人が責任をもって行動できる場面をつくり,うまく関わりながら導く必要があります。第4は,他者からの肯定的な評価です。事柄の意義を理解し,自分で決めて行動した結果に対して,まわりが認めることです。全体ではうまくいかなくても部分で捉えてほめたり,失敗しても努力や進歩を肯定的に評価したりすることが大切です。場合によっては,大きな失敗に対しても「よく思い切ってやった」とほめる度量があっていいのではないでしょうか。
 「Society 5.0」の概念は,新学習指導要領のみならず,SDGs(持続可能な開発目標)・ESD(持続可能な開発のための教育)と関連付けられるものであると考えます。段原小学校においても,学習や生活の中で「自己決定の場面」「肯定的な評価の場面」「互いに共感する場面」を大切にする意図的・計画的な指導によって,予測される近未来「Society 5.0」を生き抜く資質と能力を育んでいきます。 

個の学びと共生の学び

 12月10日は世界人権デー,「すべての人間は,生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利とについて平等である」で始まる「世界人権宣言」が1948(昭和23)年12月10日,パリで行われた第3回国連総会で採択された日です。今日の国内外の問題を見ても,71年前に唱えられたこの文言が,今もまだ私たちに突きつけられた問いのように思われます。
 本校においては,児童企画委員会によって立案された「段原小なかよし宣言」があります。この宣言は,「命を大切にします」「友達のことを考えられる人になります」「困ったことや悩みごとは相談します」という子供たちの誓いで構成されています。いじめや不登校といった問題の解決のみならず,持続可能な社会の担い手を育てる上でも,相手の立場を尊重し,自他の命を大切にする「段原小なかよし宣言」を活用し,人権教育を推進していきます。
 さて,人権教育については,国際的な潮流である「インクルーシブ教育」を促進し,共生社会の実現に向けて学校教育の在り方が課題となっています。「共生社会」とは,誰もが積極的に参加・貢献できる社会であり,相互の人格と個性を尊重し支え合い,人々の多様な在り方を認め合える社会です。「インクルーシブ(inclusive)」は「あらゆる人々を受け入れた」という意味であり,「インクルーシブ教育」とは,「共生社会を実現するために,多様な背景をもつ子供がともに学ぶ仕組みや環境」と捉えられます。この教育システムを築く上では,主体性,自律心,判断力,責任感などの人間性を育むとともに,他者,社会,自然との関係性を認識し,かかわり・つながりを尊重できる個人を育む必要があります。
また,この「インクルーシブ教育」を具現化する学習スタイルとして,「協同学習」が教育現場において,一世を風靡しているといっても過言ではありません。「協同学習」とは,小集団を活用した教育方法であり,学習課題の解決に向けて子供が一緒に取り組むことによって,自分の学習と互いの学習を最大限に高めようとするものです。子供を小集団に分け,その集団内の相互依存関係をもとに,協同的な学びを生起させるひとつの技法です。この「協同学習」については,学力の向上,対人関係スキルの獲得,自尊心の改善,多様性の理解などの成果が認められる一方で,他者に依存するあまり自立した個人が育ちにくいとの課題も言われています。この集団の機能を活用した学習スタイルをより一層効果的にするためには,構成員が様々な意見を本音で交流し合い,全員が目標に向けて努力できる質の高い集団であることが前提となります。
人とのかかわり・つながりは,相手と正面から向き合い,愛情をもって働きかけ,真に相手を生かすことによって初めて成り立ちます。しかし,現代の風潮は,何よりも自分のことが最優先され,他者や社会を意識した個人が育ちにくい傾向にあり,この問題状況は,人と人とがつながり合う関係を困難なものにしています。このような様相を克服し,人と人とがかかわり合い・つながり合い,絆を結び合うためには,個の学びと共生の学びを結びつけていく必要があります。自分の夢や志の実現に向けて行動していく自分の存在が,他者や社会からも広く認められるように,自己実現の追求をしていかなければなりません。そこでは,夢や志の実現に向かう自分の在り方を,他人や社会,自然の枠組みの中で考えていくとともに,その過程において直面する課題に対して,自分で克服する力をつけることが重要になります。
 「自己目的」は,人間を堕落させるともいわれます。自己の目的の追求が,社会とのつながりを不問にした,単なる独りよがりの利己的な考え方に終始するようでは,人間として自分を高めていくことになりません。今の自分の行為・行動は,人に迷惑をかけていないか,地域や社会の発展につながっているかを子供が自問自答しながら,自らの夢や志を実現していくための行動を選択・決定していくことが大切です。子供たちが,これから出会うたくさんの人や物事との関係の中で,かけがえのない絆を築きながら,自分の夢や目標を実現していくために,個の学びと共生の学びの双方を,高い次元で結び付ける教育活動を進めていきたいと考えます。

社会に参画する資質能力・態度を育む

 11月15日は段原小学校創立記念日です。明治30年11月15日,広島市段原尋常小学校として創立した段原小学校は,122周年を迎えます。この122年の歴史と伝統を受け継いでいくことは大切なことですが,新たな「だんばら学び文化」の充実に向けて挑戦し,学校の変化・発展を推進していくことは更に重要であると考えます。子供たちが学校と地域を愛し,これからの社会を創造していく主体になるための「生きる力」を育む新しい教育を推進していきます。
 創立記念日に先駆け11月2日(土)は「学校に行こう週間」の取組として,「土曜参観日・なかよしまつり」が開催されます。多数の保護者や地域の皆様に御来校いただき,授業の参観やPTAによる催し物やバザーを通して,地域・家庭・学校の互いの心がふれあい,絆が深まる一日になることを願っています。子供たちが,様々な体験や活動を通して,地域や社会のために自分に何ができるかについて考える機会にしたいと思います。
 わが国においては,15年ほど前から,キャリア教育,すなわち個人が社会人・職業人として自立するために必要な資質能力や態度を育てる教育の重要性がさけばれています。本校においても,社会の中で自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していくためのキャリア発達を促進する教育活動を展開しています。そこでは,学校への適応(低学年),友達づくり・集団の結束力づくり(中学年),集団の中での役割の自覚(高学年)という内容の系統性を踏まえながら,6年間を見通し中学校へつなげていくための発達課題を意識して指導しています。そして,各教科・領域を通して,よりよい人間関係をつくる力,集団の一員としてよりよい生活づくりに参画する態度の育成を重視し,体験活動や生活を改善する話し合い活動,異年齢集団による活動の充実を図っています。
このようなキャリア教育で育てるべき能力は,「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」で構成されており(平成23年中央教育審議会答申),現代の子供たちにとっては,とりわけ「人間関係形成・社会形成能力」が大きな課題です。段原小学校においては,平成31年度に行った全国学力・学習状況調査アンケート関連項目の積極的な肯定的回答(6年生)について,「今住んでいる地域の行事に参加していますか(本校56.9%,全国37.2%)」,「人の役に立つ人間になりたいですか(本校84.5%,全国74.7%)」,「地域や社会を良くするために何をすべきか考えることがありますか(本校13.8%,全国18.9%)」という結果がでています。つまり,人と人とのつながりを大切にして,地域ぐるみの教育を推進する段原地区の風土に支えられ,子供たちの地域・社会への参加意欲や態度が,大きく育っていることが示されました。反面,どのように参画していくかという具体的な自分の在り方について,十分に理解できていないことが明らかになったといえます。子供たちが,現代社会の課題を自分の問題として捉え,それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すよう,身近なところから取り組むことができる具体的な方途を考え,行動するよう指導していく必要性があります。
将来子供たちが生きる社会は,グローバル化・情報化が進み,変化の激しい先行き不透明な社会といわれています。この社会環境の中で,子供たちが希望をもって,自立的に自分の未来を切り拓くために,この「人間関係形成・社会形成能力」は,社会とのかかわりの中で生活し仕事をしていく上での基礎的で汎用的な能力となります。多様な他者の考えや立場を理解し,相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができるとともに,自分の置かれている状況を受け止め,役割を果たしつつ他者と協力・協働して地域や社会に参画する「人間関係形成・社会形成能力」の育成は,今後ますます大切になることが予測されます。学校においては,地域に貢献する体験活動や異年齢集団による活動を一層推進していきたいと考えます。家庭においても,地域の行事等に進んで参加するよう働きかけたり,親子で一緒に参加したりして,家庭・学校外での年齢や立場の違う人とのかかわりや交流を積極的に促進していただきたいと思います。

「自他の命を大切にする子供の育成」に向けて

 本校は,本年度広島市教育委員会から生徒指導研究推進校の指定を受け,いじめの未然防止と早期発見及び適切な対応の実践研究を進めています。特に「命の大切さ」に焦点を当て,「SOSの出し方」「心の回復力(レジリエンス)」に関する教育活動の促進を通して,「自他の命を大切にする子供の育成」を目指しています。
この取組の背景には,平成30年度3月末に文部科学省から,「いじめ防止の推進に関する調査結果に基づく勧告を踏まえた対応について」が全国の学校に通知され,いじめ防止対策を一層推進する旨が伝えられたことがあります。また,広島市の中学校生徒が平成29年7月,自ら命を絶ったとみられる事案では,学校が被害生徒へのいじめを正確に認知できなかったことが,広島市いじめ防止対策推進審議会による調査で明らかになったとの答申が大きく影響しています。この広島市いじめ防止対策推進審議会答申によって,真に実効性のあるいじめ防止の取組が提言されました。
いじめについては,平成25年度「いじめ防止対策推進法」の施行によって,「他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為」により「対象児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義が改められました。つまり,子供が自分の心身を傷つけられたと自覚したならばそれはいじめであり,普通はこの程度なら平気であるという見方・考え方は成り立ちません。学校におけるいじめ実態把握も,「発生件数」から「認知件数」となりました。本校におけるいじめ認知件数は,昨年度53件(すべて解決済み)であり,子供が心身の苦痛を感じた案件については,いじめではないか,いじめかもしれないと考え,決して見逃すことがないよう取り組んでいます。このような状況を深く受け止め,いじめの未然防止及び早期発見・早期対応に努め,更なる指導の徹底を図っていきたいと考えます。
 そこで,いじめはどの子供にも,どの学校でも起こり得るものであることを十分に認識したうえで,次の点に重点を置いて一層取り組んで参りますので,今後とも御支援と御協力のほどお願いいたします。また,家庭において子供が発するどんな小さなサインでも,御遠慮なく担任・学校までお知らせください。

1 教職員が子供の思いに寄り添い,柔軟かつ効果的に対応する日常的なかかわりを通して,子供が自分の悩み事や周りで気になることがあれば,先生に相談してみようと思うような信頼関係を一層築いていく。一人一人の児童が自分はまわりから大切にされていると実感することにより,段原小学校が「いじめは重大な人権侵害であり,いじめを絶対に許さない学校」であることへの安心感をもつようにする。
2 いじめを未然に防止するために,一人一人の子供が,自らの存在感を実感でき,安心し快適に過ごすことのできる支持的な風土の醸成された学級・学校づくりを促進する。きめ細やかな観察,定期・随時のアンケートや教育相談等によって,子供の実態を的確に把握するとともに,道徳や学級活動,本校独自の「段原小なかよし宣言」をもとにした児童会による主体的な取組によって,子供同士の良好な人間関係を育てる。
3 いじめの早期発見及び適切な対応のために,日ごろの観察の中で子供の小さなサインに気付くようにする,また定期的なアンケートや教育相談により,子供のSOSを積極的に認知できるようにする。認知したいじめの対応に当たっては,疑いの段階も含め学校いじめ防止委員会を開催し,必要に応じて教育委員会や心理・福祉分野等の様々な関係機関と連携しながら,組織的に事実確認や対応方針を検討する。
4 教職員間のいじめに関する情報共有の徹底,学校いじめ防止委員会を中心とした対応,定期・随時の教育相談の実施,様々な分野の専門家との連携,校内研修の実施,地域・保護者との連携等,組織的・協働的な学校体制づくりを推進する。いじめを積極的に認知し,いじめを見逃さないようにするために,「教育相談・支援主任」を校内に位置付ける。
5 本校の本年度教育活動の重点である「学習の主体性」「コミュニケーション能力」「自他の命の尊重」「適応力・回復力(レジリエンス)」の育成を関連付ける要件として,学習や生活の指導において「自己決定の場を大切にする」「肯定的な評価を行う」「共感的な人間関係を構築する」に焦点を当てた取組を推進する。

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

 昨日の大雨による臨時休校については,御協力をいただき,誠にありがとうございました。始業日ではありましたが,避難行動を促す警戒レベル3が発令されていたことを鑑み,登下校の安全を考慮して,このような措置をとりました。結果的には,線上降水帯にかからず天候はいくらか回復しましたが,最悪の場合を想定した危機管理に基づく判断として,御理解くださいますようお願いいたします。
さて,前期後半の始業に向けて,プログラミング学習,特別支援教育,生徒指導,不審者対応等の校内研修とともに,平成31年度全国学力・学習状況調査(6年生)の結果をもとに,日々の授業を改善することを目的とした校内研修を行いました。この傾向と対策の詳細については,後日お知らせします。
学力調査の意義は,標準化されたテストによって,現在の学力の獲得状況を把握し,日々の授業の改善に役立てることです。したがって,国・県・市との単純な比較をして,一喜一憂するものではありません。令和2年の新学習指導要領を見据えながら,(1)子供が見通しをもって粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる主体的な学び,(2)他者との協働や外界との情報との相互作用を通じて,自らの考えを深める対話的な学び,(3)習得・活用・探究というプロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びを日常的な授業で具現化するよう,不断の授業改善に努めていきます。
この「主体的・対話的で深い学び」を実現するには,次の2点を踏まえて子供の「努力する」を引き出すことが重要であると考えます。
 ひとつは,子供たちが目標を達成した自分の姿をイメージするとともに,達成のための具体的な行動目標を明確にすることです。ただ漠然とした目標を掲げて,「がんばる」というかけ声を繰り返すだけでは,子供の主体的な学びにつながりません。たとえば,「算数をがんばる」→「単元テストをすべて70点以上にする」→「家で1時間以上復習する」のように,「目標を設定する」→「何がどうなったら目標を達成できたといえるのかを明確にする」→「そのために自分は何をどうしなければならないのかを具体化する」を明らかにすることが大切です。これは,目標の逆向き設計ともいわれています。子供自身が自己決定・意思決定するとともに,高すぎない目標,低すぎない目標で,努力すれば手の届く到達可能な目標に設定することが重要になります。
 次に,子供たちが「集中する・継続する」ことです。これは,「集中する」ことと「継続する」ことのどちらか一方だけではなく,双方が高い次元で結びつくことです。ノートの字を丁寧に書く,先生の話を正確に聴く,主語と述語をはっきりさせて話すなど,学習活動のひとつひとつを丁寧に行うのです。しかも,このような集中した学習活動が,決して一過性に終わらないように,根気強く続けて行うことが大切になります。和裁においても100枚縫えという教えがあるように,100日集中して継続できれば,少なくとも自分に何らかの向上・進歩が実感できるものと思われます。「努力する」ということは,「集中する・継続する」という土台を伴わなければ,決して成立するものではありません。
客観的・具体的な目標設定と,集中と継続に基づいた努力ができれば,子供は努力によって楽しさを味わい,やがて「努力する」こと自体が楽しくなってきます。段原小学校においては,「努力する」ことを,小学校期の学力形成における基礎・基本と捉え,すべての子供の「主体的・対話的で深い学び」を通して,確かな学力の向上を実現していきます。

学校における働き方改革の推進

 公立小中学校を対象とした文部科学省の教員勤務実態調査(2016)では,中学校教諭の6割,小学校教諭の3割が,「過労死ライン」といわれる月80時間を上回っているとの実態が明らかになりました。これを受けて,教員のこれまでの働き方を見直し,自らの授業を磨くとともに,その人間性や創造性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができることを目的として,学校における働き方改革を進めていくことが緊急の課題となりました。この背景については,事案に関する文部科学省の「中間まとめ(2017)」の中で,「学校の抱える課題の複雑化・困難化と学校の役割の拡大」「看過できない教員の勤務時間の増加」「新学習指導要領の実施による授業時数の増加」等が指摘されています。これを踏まえた「中央教育審議会答申(2018)」においては,「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが,必ずしも教員が担う必要のない業務」「教員の業務だが,負担軽減が可能な業務」との業務の分類等が示され,学校における業務改善と勤務時間管理の徹底が提唱されました。
本市においても,「広島市教育大綱(2016)」「広島市教育振興基本計画(2018修正)」に基づく「広島市の学校における働き方改革推進プラン(2017)」が策定され,学校でこれまで教職員の担ってきた役割の見直しと業務の効率化を図り,限られた時間の中で児童に向き合う時間を十分に確保することが提言されています。ここでは業務改善の具体として,「登下校に関する対応の見直し」「外部人材の活用」「学校行事の見直し」「職場環境改善による業務の効率化」「定時退校日の実施」「部活動休養日の実施」「留守番電話の設置」「学校閉庁日の実施」等の取組が示されています。
本年度4月においては,広島市教育委員会より学校を通して,「学校における働き方改革に向けた取組についてのお願い」を各家庭に配布したところです。教職員の勤務が長時間化している実態の中で,子供たちの豊かな学び・育ちのためには,授業改善のための時間や子供たちに接する時間を確保できる環境を整える必要があり,その具体的な取組をあげています。その主な取組として,「勤務終了後は自動応答とする留守番電話の設置」「週1回以上,勤務時間終了後速やかに退校する定時退校の実施」「夏休みなどの長期休業中における数日間の学校一斉閉庁」等が示されています。
この文部科学省・広島市の方針を受けて,広島市公立小学校においても,働き方改革が進められています。たとえば,夏休み期間中にまとまった休日を取れるように,学校閉庁日を設けるなどして教職員の休日を確保する取組です。また,夏休みに研修などを積極的に行うよう求めた過去の通知を廃止する措置も行われています。本校においても,泳ぎの苦手な子供を対象とした水泳教室の実施について,段原中学校区3小学校で協議し,本年度から見送りました。泳げない子供が夏休みの補習を受け,泳力を向上させることは大変有意義ですが,通常の体育水泳授業の充実を図ることによって,この矛盾を克服することにしました。また,子供たちが登校しない夏休みにおいても,教職員は通常通り勤務するわけですが,教職員の授業力・指導力向上のための研修についても,できるだけ精選して内容の充実を図りながら,教育活動の質は維持・向上していけるよう努めていきます。このように,教育の量から質への転換を実現することを通して,教職員の負担軽減により子供たちの学びの質が低下しないよう,学校における働き方改革と日々の授業改善を結び付けていきたいと考えます。
教職は「ブラック」であるとのイメージが,社会全体に浸透し,教員志願者数が年々減少しています。この問題状況を乗り越えていくためにも,保護者や地域との信頼関係を維持しつつ,働き方改革の推進につながる新たな協働関係づくりを築いていくことが不可欠です。「すべての取組は広島の未来を担う子供のために」という共通認識の下で,教職員の働き方改革を推進していく意義について,御理解と御協力をいただきますようお願いいたします。

コミュニケーション能力・態度の育成

 遅い時期の梅雨入りとなりました。本校においては,4・5月の生活目標で「元気なあいさつをしよう」に取り組み,6月には児童会が挨拶運動を実施しました。この期間,生徒指導担当教諭による毎朝の挨拶・見守り活動もあって,「立ち止まって」「相手の目を見て」「大きな声で」「ていねいにお辞儀」に重点を置いた心のこもった挨拶をする子供が増えてきました。これは,コミュニケーション能力・態度の要素である「人の気持ちがわかる」につながるものです。
 挨拶は心でするものであり,心が伝わらなければ,無機質で空虚なものになってしまいます。もちろん,挨拶は心が伝わればよいのですから,本来その表現方法は自由です。しかしながら,生活の基本として小学校期に教える挨拶は,ある程度その型を示すことが大切になると考えます。
 朝に正門で交わす挨拶も,子供は5メートル前から目と目を合わせ歩み寄ってくるうちに,どちらともなく笑顔がこぼれるといった場面が少なくありません。時には,何も言葉を発しなくても目と目を合わせ,ニコリとうなずくだけで,よほど心が通じ合うこともあります。つまり,「今日も元気です」「今日も頑張ります」など,子供の思っていることが,黙っていても伝わってくるのです。このように考えると,挨拶は心を伝える自己表現であり,自立に向かう第一歩といえます。
 また,同時に挨拶は,相手の存在を認めたというサインでもあると考えられます。一方で自己主張として自分を表現しながら,もう一方では相手を認めたという相互の意思疎通が,その行為の中にあります。「今日も元気そうですね」「今日は張り切っていますね」など,相手の存在を確認し,相互に認め合うサインとしての意味が込められているといえます。
挨拶ができないということは,自己主張ができないばかりでなく,相手からも認めてもらえないことにもつながり,ひいては社会や集団のかかわりの中で自己実現していくことを困難にしてしまいます。まさに,挨拶は人とのより良い人間関係をつくり,その集団や社会の中で自分の夢や志を実現していくための基本であると考えます。
本年度は子供一人一人の学力向上を標榜し,「積極的にコミュニケーションを図ろうとする子供の育成」を研究主題とし,小集団での対話を生かし,自分の考えを広げ深める授業づくりの工夫を進めています。これまでこの学校だよりでもお知らせしたように,来年度から施行される新学習指導要領における学力は,「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びの向かう力・人間性等」という要素によって成り立ち,その新しい学力は,「主体的・対話的で深い学び」の積み重ねが必要とされます。積極的にコミュニケーションを図る能力・態度は,これらのキーワードの基盤となるものです。
 コミュニケーションは,人との信頼関係を築き,人生を豊かにするために欠かせません。ここ十数年間,民間企業においても,人材に求める最も必要とされる能力・態度に挙げられています。このコミュニケーション能力・態度を育成するには,(1)笑顔で明るい挨拶ができる,(2)相手の話を集中して正確に聴く,(3)目的や結論を明確にしてわかりやすく話をする,(4)常に相手に対する気配りや心遣いを忘れない,(5)表情,身振り・手振りを活用していることなどが大切とされています。日々の学習や生活の積み重ねを通して,コミュニケーション能力・態度,すなわち「聴く」「伝える」「人の気持ちがわかる」という要件を子供たち一人一人に獲得させ,新たな社会が要請する新しい学力の習得・形成へとつなげていきます。

運動会で育てる子供の資質と能力

 本校運動会の実施に向けて,「意欲的に参加する」「協力することの大切さに気付く」「運動の楽しさを味わう」というねらいを教師と子供が共有し,競技や演技の練習に取り組んでいます。これらのねらいを子供に育てるべき資質と能力の観点で言い換えると,「主体性」「責任感」「適応力」になると考えます。
 運動会は,体を動かして楽しむ会です。そこでは,子供たちが自分自身に挑戦し,今の自分を乗り越え,新たな自分をつくることが大切になります。出場する演技や競技のみならず,入場や退場の行進,開会式や閉会式の姿勢や動き,応援や係活動等,自分の力をすべて出して全力で行うことを要求しています。そこでは,自分から進んで行う「主体性」,自分の役割を果たす「責任感」,一定の暑さや疲れを耐え跳ね返す「適応力」が必要になります。しかしながら,これらの資質と能力は,運動会のみでなく,学校の教育活動全体を通して育てるべき資質と能力であるとともに,子供が社会の担い手となる将来においても重要な資質と能力であると言えます。
 まず,「主体性」とは,自分の意志・判断で行動しようとする態度と捉えられます。この「主体性」は,「自主性」と異なります。「自主性」とは,何をするのか,予め決まっている事柄を人から言われる前に図式的・反射的に,いかに早く行うかとする態度といえます。一方,何をするのか決まっていない事柄の目的・内容・方法を自分で考え判断し,行動するのが「主体性」です。当然のことながら,自分が決めて行動した結果に対しては,一定の責任が伴います。この「主体性」を育てていくためには,「何のために」と事柄の意義や意味内容を自分自身に問いながら,自分で自分らしく決定していくことが重要になります。また,まわりの大人が放任や過保護・過干渉に偏らず,適切な距離で子供を見守り,肯定的な評価をしていくことが必要です。
 次に,「責任感」とは,自分の仕事や行為についての責任を果たそうとする態度と捉えられます。自分の意志・判断で決定し,行動した結果について,責任を果たそうとする気持ちを重んずる人が,「責任感」の強い人といえます。自分に任された仕事を最後までやり遂げることは,社会人としての基本であり,強い「責任感」は周囲との良好な人間関係を築くとともに,他者からの信用や信頼につながります。この「責任感」を育てていくためには,やる気があれば確実に実現する身近な目標の達成の積み重ねが必要です。また,結果について,言い訳をしたり,人のせいにしたりしないで,自分を律し自分に厳しくしていくことが重要になります。
 最後に,「適応力」とは,状況や環境に合わせて行動の仕方や考えを変える能力と捉えられます。復元力,回復力,抵抗力,耐久力,逆境力などと軌を一にする能力といえます。先行き不透明で予測困難といわれるこれからの社会においては,ストレスに対して柔軟に適応したり,プレッシャーを跳ね返したりして乗り越える能力が不可欠になります。この「適応力」を育てていくためには,自分で感情をコントロールしながら,自分を大切にし,いつかはできると信じて,丁寧に根気強く取り組むことが重要です。たとえ失敗しても,子供もが次はできる,もう少し頑張ればできる,いつかはできると思うように,まわりの大人が見守り支援する必要があります。
 子供たちは,本年度「仲間と団結 一人一人が輝け 段原っ子」というテーマを掲げています。このテーマには,「みんなで心をひとつにして輝きたい」との気持ちが込められています。「自分のこととみんなのこと」「競争することと協同すること」等,運動会において生起する様々な問題を克服しようとする強い思いを感じます。熱中症の予防等,健康・安全に対する十分な配慮をしながら,子供たちが達成感や成就感を最大限に実感し,「主体性」「責任感」「適応力」を育てる有意義な運動会にしたいと考えます。

新学習指導要領の実施に向けて

 来年度から,新学習指導要領の全面実施となります。学習指導要領とは,文部科学省が告示する初等教育および中等教育における教育課程の基準であり,各教科等の目標や大まかな教育内容が定められています。この目標,内容と学校教育法施行規則で定められた年間の標準授業時数等を踏まえ,学校が地域,家庭,学校の実態に応じて,教育課程を編成しています。
 この新学習指導要領は,10年後の社会と子どもたちの未来を標榜しています。ここでは,「子どもたちの65%は,大学卒業後,今は存在していない職業に就く(C.デビッドソン)」,「今後10〜20年程度で,約47%の仕事が自動化される可能性が高い(M.オズボーン)」,「2030年までには,週15時間程度働けば済むようになる(J.M.ケインズ)」との社会学者の未来予測が前提となっています。そして,この未来予測を受けて,新学習指導要領における育成すべき資質,能力は,「何を知っているか,何ができるか」(個別の知識,技能)」,「知っていること,できることをどう使うか(思考力,判断力,表現力等)」,「どのように社会,世界と関わり,よりよい人生を送るか(主体性,多様性,協働性,学びに向かう力,人間性等)」と捉えられています。
 この度の学習指導要領改訂の中心は,高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的な改革であり,高等教育においては,社会参画のための教科,より高度な思考力等を育成する教科の設置,日本史の必修化と地理歴史科の見直し等が実施されるとともに,大学入学者選抜においては,各大学の個別選抜による多面的な選抜方法の促進,思考力,判断力,表現力に重心を置いた内容になります。
小学校に関係する改訂のポイントとしては,言語能力の確実な育成,理数教育の充実,伝統や文化に関する教育の充実,体験活動の充実,外国語教育の充実,情報活用能力(プログラミング教育を含む),現代的諸課題への対応があげられていますが,喫緊の課題は次の2点です。
まず,英語教育の拡充強化があります。小学校中学年で35時間の英語活動が加わり(これより年間授業時数3年生980時間,4年生1015時間),高学年で70時間の「英語科」が導入されます。当然のことながら,中,高等学校における英語教育は一層高度な内容になります。広島市においては,「広島型カリキュラム」として,すでに高学年において70時間の英語活動を実施しているので(年間授業時数5年生,6年生共に1015時間),中学年の週1時間の英語科授業枠をどのように保証するかが課題となっています。(低学年は,年間授業時数1年生850時間,2年生910時間のまま)。
 次に,「特別の教科としての道徳(道徳科)」の設置です。いじめの問題への対応の充実や子どもの発達段階をより一層踏まえた体系的なものに改善され,検定教科書が導入されます。読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導や,子どもに望ましいと思われる分かりきったことを言わせたり,書かせたりする授業を改善します。そして,答えがひとつでない課題に子どもたちが道徳的に向き合い,「考え,議論する」授業を積み重ねて,子どもの道徳性を育みます。
 授業の実際においては,「主体的,対話的で深い学び」が提唱され,不断の授業改善が求められています。それは,(1) 子どもたちが見通しをもって粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる主体的な学び,(2) 他者との協働や外界の情報との相互作用を通じて,自らの考えを深める対話的な学び,(3) 習得,活用,探求という学習プロセスの中で,問題発見,解決を念頭に置いた深い学びの実現です。
本校においては,量から質へと学びの転換を推進しながら,過去に形成された既存の知識,技能を活用,応用し,新たな知識,技能を獲得しようとする意欲や態度を育てる教育活動を展開していきます。そして,他からの支配や助力を受けず,自分の行動を自分の立てた規律に従って正しく規制していく自律の力,すなわち主体性の基礎を確立していきます。
 

新たな「だんばら学び文化」の創出

新1年生71名を迎え,本年度は420名の児童と37名の教職員で,平成31年度をスタートしました。
段原小学校の教育目標である「主体的に学習する段原っ子の育成」を常に念頭に置き,教職員一同力を合わせて日々の教育活動に取り組みます。そして,保護者,地域,学校が一体となった学校づくりに努めていきます。
さて,平成32年度実施の新学習指導要領において,これからの社会で求められる学力の要素が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」と規定され,子どもの「主体性」を育むことが一層重視されています。つまり,何を知っているか・何ができるかだけでなく,それをどのように使うか,自らが問いを発して答えを創り出していく資質や能力が求められています。古くから連綿と続く本校教育目標は,社会変化と学校や子どもの課題を先取りしていたと言っても過言ではありません。
この「主体性」をどのように育むかについては,自明なものではありませんが,最近の論調からいくつかの要件に収斂することができます。第1は,物事の意味や意義を問うことです。日常の事柄に対して,「なぜか」という本質的な疑問をもつことです。自問自答することによって,「何を目指し,どのようにすべきか,しなければならないか」を自覚するようになります。第2は,自分で決めることです。自分の性格,能力,適性等を踏まえて,自分で選択・決定していくのです。まわりに同調するばかりでなく,自分らしさを発揮する経験も必要になります。第3は,見守り支えることです。子どもが自分でできるように,大人が適切に働きかけていくことです。細かく言ってやらせる過干渉や,子ども任せの自由放任になることなく,大人が責任をもって鼓動できる場面をつくり,うまくかかわりながら導いてやる必要があります。第4は,他者からの肯定的な評価です。事柄の意義を理解し,自分で決めて行動した結果に対して,まわりが認めることです。全体ではうまくいかなくても部分で捉えてほめたり,失敗してもその努力や小さな進歩を肯定的に評価したりすることが大切です。場合によっては,大きな失敗に対しても「よく思い切ってやった」とほめる度量があってもいいのではないでしょうか。
段原小学校創立121年の歴史と伝統を継承しながら,挑戦する学校・創造する学校として,これからの新しい社会において必要とされる教育内容・教育活動を子どもの学びに進んで取り入れていきます。そして,新たな「だんばら学び文化」の創出を通して,「主体的に学習する段原っ子の育成」を高い次元で実現します。

広島市立段原小学校  校長  島本 靖
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広島市立段原小学校
住所:広島県広島市南区的場町二丁目4-19
TEL:082-261-4245