基町幼稚園は、『ひろしまのエノキ』の絵本に登場する基町小学校と隣接しています。身近な場所に被爆エノキ１世、２世、３世、被爆くすのき等、戦争や原爆に耐え懸命に生きる樹木があります。そこで11月４日、親子や友達と一緒にいることの幸せと平和を感じてほしいとの願いを込め、基町地区の被爆樹木を巡る親子オリエンテーリングを行いました。
　最初に、中村由利江先生を講師にお迎えし、平和についてのお話を聞きました。中村先生は、戦争や原爆で傷ついた“忘れてはならない過去”と私たちはたくさんの命から生まれてきているという“つながっている現在”そして、みんなが仲良くし、愛され、大きくなってほしいという“かけがえのない未来”について語ってくださいました。一人一人の子供たちに太陽のような笑顔で本当にいつくしみながら接してくださり、どの子供もしっかり平和を感じることができました。保護者も中村先生のお話に聞き入り、感動のあまり涙を流す方もいました。
　中村先生から心にぽかぽかあたたかいものを頂いた後、実際に教師手作りの地図を片手に親子で被爆樹木を見て回りました。絵本『ひろしまのエノキ』の中で登場する被爆エノキ１世は元々陸軍病院の中に生えていたエノキで、戦前は病気の人たちを癒しました。被爆しても命の限り懸命に生きる姿で戦後に生きる人々に勇気をあたえました。傷つきながらも子孫を残し、最後まで懸命に生きた被爆エノキ１世の痛々しさや力強さ、たくましさや勇気が、絵本の中で描かれています。親子でじっくり眺める姿、どれだけ苦しんだだろうと思いを寄せる親子の姿に、被爆エノキ１世へやさしい思いが届いた気がしました。
　この日は天気も良くお散歩日和で、のんびり自然を感じながらのオリエンテーリングとなりました。共に歩くことで子供同士、保護者同士の輪が広がり、親子のきずなが深まり、平和を願う被爆樹木たちともつながり・・・この何気ない時間がかけがえのない幸せであり平和の証であることを体感できた１日となりました。

写真　上　　講師、中村由利江先生のお話。つながる命についてお話し
　　　　　してくださいました。

写真　中　　被爆エノキ１世の写真。みんなじっくり見入っています。

写真　下　　オリエンテーリングの様子。